近現代史
これも『TOKYO異形』と同じく、東京新聞の好企画。単に、戦争直後の記録写真を集めたというものではなく、ドラマがある。新聞社所蔵のもののほか、米空軍の元写真偵察部員が庶民を撮影し、のちに中部大学に託した写真、市民が所蔵していた写真などが多数収め…
著者は1975年生まれの新聞記者だが、どういうわけか新左翼運動に興味と共感を抱き、文献資料を読みあさってまとめたのが本書である。1960年代から70年代初頭の新左翼運動や全共闘運動を経験していないという点では、私も同じだ。とはいえ、私の学生時代には…
植民地建築という新鮮な視点から近代建築を論じて、注目されてきた著者の新著。この著者がこれまで出版してきたのは、専門書か写真中心のビジュアル本だったが、本書は初めての教養書といっていいだろう。 著者によると日本は、支配下に置いた中国・台湾・朝…
『戦後日本スタディーズ』も、これで完結。今回は年代が古いこともあり、歴史書という印象がぐっと強くなった。座談会とインタビュー、11本の論文から構成されている。著者たちのスタンスを大別すれば、次の三つになるだろうか。 第1は、戦中から戦後にかけ…
著者には『誰も「戦後」を覚えていない』と題して昭和20年から30年代までを論じた三冊の著書があり、同じく文春新書として出版されているが、これはその最新刊。テーマは、40年代である。昭和ブームだとはいえ、もう40年代までがノスタルジーの対象になった…
新著です。1945年以降の日本の経済格差の動向を、官庁統計や調査データから明らかにするとともに、さまざまな事件や風俗、小説や映画、マンガなどを取り上げて、戦後史のなかの「格差」を時系列的に描きました。河出書房新社の新しい選書「河出ブックス」の…
これは、文句なしに名著である。明治初期から日中戦争開戦の頃までの通史の形を取りながらも、一貫した視点から膨大な研究の蓄積を配列しており、読み応えがある。 とくに私のような門外漢研究者にとっては、格好の手引きといっていい。近代的労働者階級の誕…
大学院に入ったばかりの頃、「日本はこれでいいのか市民連合(日市連)」という団体で活動していたことがある。ベ平連に憧れていたので、その流れをくむ市民運動に参加したいと前から思っていたからだが、失望することが多かった。何より問題なのは、小田実を…
これは大ベストセラーだが、あまりに大部で場所をとるのでこれまで買わずにいた。ようやく文庫化されたので、読んでみることに。終戦までと終戦後の二巻構成である。 上巻は、政治+軍事史といっていい。著者は戦記物の著作が多いが、そのエッセンスが詰め込…
「昭和戦後史の現場」という副題がつく。政治はもちろんのこと、犯罪や事件・災害、スポーツや芸能、建設工事、イベントなど広い範囲のできごとを、東京各所の現場に即して振り返っていくというもの。 よくありそうな企画なのだが、独自色もある。もともと共同…
丸山真男が東京帝国大学助教授だった1944年、徴兵されて二等兵になり、上等兵からいじめを受けたという話は有名だ。赤木智弘が「丸山真男をひっぱたきたい」というエッセイで紹介し、戦争になれば自分も丸山真男をひっぱたけるような社会になるだろうという…