大橋隆『下町讃歌』

 著者とは、近所の銭湯風カフェ「さばのゆ」で会った。その場で奨められて買ったのが、この本。帯に「京都生まれが東京の下町を好きになるとは珍しく、新鮮。しかも下町の魅力は居酒屋と銭湯にありというのだから、、うれしいではないか」と、川本三郎の推薦文がある。
 著者は雑誌『東京人』で企画営業を担当していた人物。編集者ではないので、文章にはやや素人臭さが残る。浅草から始まって、上野、入谷、谷根千と、下町各所を回っていくのだが、情報量にもやや粗密がある。しかし、著者が愛して止まない浅草、若い頃から親しんだ早稲田周辺など、幅広い着眼と思い入れが相まって、類書にみない味わいがある。面白いのは、ときどき出てくる京都との比較。築地、月島、佃島を取り上げて、海と川を背景にもつ東京の地理的な広がりこそ、京都にない東京の魅力だという。
 素朴ながら分かりやすい手書きの地図が多数あって、散歩の参考に使える。一般書店では、なかなか見かけないかもしれない。

下町讃歌

下町讃歌