共同通信社編『東京 あの時ここで』

 「昭和戦後史の現場」という副題がつく。政治はもちろんのこと、犯罪や事件・災害、スポーツや芸能、建設工事、イベントなど広い範囲のできごとを、東京各所の現場に即して振り返っていくというもの。
 よくありそうな企画なのだが、独自色もある。もともと共同通信の配信する記事だから、読者のかなりの部分は地方居住者。それだけに、地理的な位置関係についての図解や、現場を概観する写真が多い。たとえば、進駐軍が接収した主な建物の分布や、東京都の行政区分の推移、大学紛争当時のお茶の水界隈の校舎分布図、さらにはトキワ荘内部の部屋の配置など、実にわかりやすい。安田講堂攻防戦で、機動隊が制圧した直後の講堂内部の写真は、初めてみた。
 内容そのものは広く知られたことが多く、踏み込みの足りない点も少なくないが、この図解と写真には価値がある。

東京 あの時ここで―昭和戦後史の現場 (新潮文庫)

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