2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧
なぎら健壱が、古き時代の雰囲気を色濃く残し、いつ滅びるかわからない(ように思わせる)食堂・喫茶店・酒場を巡り歩くという、雑誌連載の単行本化。赤羽「まるます家」の女性店員たちがずらりと並んだ、表紙の写真が素晴らしい。奥には、なぎら健壱が何とも…
見田宗介の「まなざしの地獄」は、私の世代の社会学者には忘れることのできない名論考である。連続射殺事件の永山則夫のライフヒストリーに題材をとり、現代日本における階級の意味について論じたもので、永山則夫に関する文献の中でもトップにあげておきた…
以前からバーンスタイン盤でときどき聴いてはいたが、いまひとつはっきり頭に入らないままだったのが、この曲。ところが、ザルツブルクでウィーン・フィルの演奏を聴いて、すっかり好きになってしまった。それで何種類か買い求めて聴いていたのだが、結局の…
「日本国勢図会長期統計版」というサブタイトルがついている。題名以上に内容は豊富で、もっとも古いものでは1872年(明治5年)にまでさかのぼり、2005年までのデータを収録している。 この種の統計集は、「広く浅く」なので専門的な研究には役に立たない……と…
先日23巻を手に入れて読んだばかりだが、今度は24巻が出た。今回も13のストーリーを収めているが、酒に関するうんちくを生かした、おしゃれで知的な雰囲気のものが多い。 「島育ち」──登場するのは、「ザ・シックス・アイル」というウイスキー。スコットラン…
必要があって、再々読。必読は、現実に起こった事件から題をとりつつ、この社会の随所にある階級的な侮蔑とルサンチマンを描き出し、これが通り魔事件を生み出すことを暗示した「偽作 深川通り魔殺人事件」という一文。今だからこそ、読まれなければならない…
大学紛争の時代、何人かの教員が日本大学を去っているが、この著者もその一人で、その後は評論家として活躍した。まだご存命のはずだが、最近の活動は知らない。 本書は、私の理解では『青少年非行・犯罪史資料』(全3巻)とともに、著者の最大の仕事を構成す…
著者は犯罪社会学者だが、いろいろな犯罪事例を取上げ、その時代の社会状況や時代精神と関わらせながら論じるという、やや評論めいた著作を書くのを得意とした。「アプレ人間」「管理社会」など、やや時代がかった用語が出てくるのは、この世代の社会学者し…
誰か、こんな本を書かないかと思っていた。書いたのは、田村秀さん。なるほど、地方行政のスペシャリストだし、全国を駆け回っているらしいから、適任である。 それにしても、ずいぶん回っていらっしゃる。富士宮の焼きそば、宇都宮の餃子、東松山のやきとり…
デジカメの不毛な画素数競争が止まらない。コンパクトカメラのくせに1000万画素などという、無駄なスペックのカメラが横行している。 デジカメの標準的なCCDは数ミリ角しかない。画素の大きさは、1.7マイクロメートル程度である。可視光の波長は0.6マイクロ…
酔っ払いの生態をおもしろおかしく描いたエッセイというのは、昔から数あるけれど、これはその傑作の数々に連なる一冊。著者は、札幌に住みススキノで日々飲み歩いている小説家である。 エッセイのかっこうの題材になるのは「記憶喪失系」のエピソードだろう…
2001年刊の文庫化。居酒屋が舞台で女性が主人公の小説ということで、読んでみた。一見したところ何でもない店だけど、居心地がよく季節の美味しいものを出す「いい居酒屋」の雰囲気は、よく描かれている。 しかし、40ちょっと前の魅力的な女性が70歳近いひと…
2005年刊の文庫化。映画化されて、ずいぶん評判になっている。主人公・石上のキャラがいい。理知的で暗くて純情。他人とは思えない(笑)。 これから読む人もいるだろうから抽象的に書くが、「対象のズレ」と「時間のズレ」がポイント。「時間のズレ」の方は見…
この作品、連載開始から20年以上経つが、ようやく23巻。粗製濫造はせず、良い水準を保っているといっていい。今回は、13のストーリーを収めている。 「予期せぬ掘り出し物」──アードベッグにこんな酒(セレンディピティ)があるとは知らなかった。いかにも松ち…
政府の労働政策が、微妙に方向転換している。これまでは規制緩和一本槍だったが、格差批判やワーキングプアが増えているという指摘などを受け、規制を若干厳しくする方向に向かっているようだ。 この方向転換を「労働再規制」と呼び、その転換は2006年に始ま…