2009-09-01から1ヶ月間の記事一覧

岡田喜一郎『昭和歌謡映画館』

昔のB級映画ものを、もう一冊。本書は、エノケン、美空ひばり、石原裕次郎、小林旭などが主演し、主題歌を歌った映画を中心に、昭和20年代から40年代までの、さまざまな歌謡映画を紹介している。400ページを超えるボリュームで、このテーマに関しては、当面…

樋口尚文『ロマンポルノと実録やくざ映画』

最近、昔のB級映画が静かなブーム、なのだろうか。多くはビデオソフト化されていないのだが、衛星放送やケーブルテレビが普及して、比較的かんたんに見ることかできるようになったことから、ガイドブック的なものも求められるようになっているのかもしれない…

鴨下信一「ユリ・ゲラーがやってきた:40年代の昭和」

著者には『誰も「戦後」を覚えていない』と題して昭和20年から30年代までを論じた三冊の著書があり、同じく文春新書として出版されているが、これはその最新刊。テーマは、40年代である。昭和ブームだとはいえ、もう40年代までがノスタルジーの対象になった…

斎藤美奈子『誤読日記』

斎藤美奈子は、私が逆立ちしてもかなわない、と常日頃から感じている著者の一人である。 本書は『週刊朝日』と『AERA』に連載された書評をまとめたものだが、通り一遍の書評集とは訳が違う。タレント本やノウハウ本、中高生向け恋愛小説、三流ビジネス本など…

藤木TDC/イシワタフミアキ『昭和幻景』

文を担当している藤木は、『東京裏路地“懐”食紀行』などの著書があり、ヤミ市起源の飲食店街を精力的に取材していることで知られる異色のライターである。これまでの著書は、「食」に重きをおいていて、戦争直後の雰囲気をとどめる建物そのものには、あまり…

橋本健二『「格差」の戦後史』

新著です。1945年以降の日本の経済格差の動向を、官庁統計や調査データから明らかにするとともに、さまざまな事件や風俗、小説や映画、マンガなどを取り上げて、戦後史のなかの「格差」を時系列的に描きました。河出書房新社の新しい選書「河出ブックス」の…

リヒテル EMI録音全集

クラシック音楽を聴き始めた中高生の頃、リヒテルのレコードは高嶺の花だった。初心者だから、聴いたことのない名曲のレコードをひととおり集めるのが優先だ。だから、廉価盤の中で、できるだけいい演奏を選んで買うというのが基本になる。当時、いわゆる名…

川本三郎『向田邦子と昭和の東京』

向田邦子は一九二九年生まれだから、ちょうど私の親の世代ということになる。まだまだ活躍していておかしくない年代だが、一九八一年、取材先の台湾で、飛行機墜落事故により急逝。本書は彼女の作品の数々を「昭和」「東京」を切り口に解読していくものであ…

石井寛治『日本の産業革命』

これは、文句なしに名著である。明治初期から日中戦争開戦の頃までの通史の形を取りながらも、一貫した視点から膨大な研究の蓄積を配列しており、読み応えがある。 とくに私のような門外漢研究者にとっては、格好の手引きといっていい。近代的労働者階級の誕…

秋本治『両さんと歩く下町』

先日読んだ『東京深川三代目』で、この著者の下町への愛着と見識が分かっていたので、そういえばこんな本もあったなと、手に取ってみた。これが、なかなか面白い。ありきたりの下町本などより、ずっといい。 まず、下町の風景を克明に描いたペン画がすばらし…