鈴木英生『新左翼とロスジェネ』

 著者は1975年生まれの新聞記者だが、どういうわけか新左翼運動に興味と共感を抱き、文献資料を読みあさってまとめたのが本書である。1960年代から70年代初頭の新左翼運動や全共闘運動を経験していないという点では、私も同じだ。とはいえ、私の学生時代にはその残照のようなものがあり、末席に連なっていたという意識はある。これに対してこの著者にとっては、これらはまったくの歴史的事実であり、その問題提起を現代においてどう受け止めるかと発想している。
 書名にも見られるように、著者は今日のロスジェネと言われる若者たちの疎外感や「生きづらさ」は、新左翼の若者たちと共通だと主張する。とってつけたような気がしないではない。当時の若者と今日の若者では、階級構造に占める位置がまったく違うからだ。しかし、本書は新左翼運動の歴史と思想についての入門書として、けっこうよくできている。何しろまったく経験していないわけだから、納得がゆくまで資料を読み込み、自分でも納得できるように書いている。だから、経験していない世代にも、またこれまで共感を持てずにいた中高年にも、わかりやすい。これは、本書のメリットである。
 結果的には、全共闘新左翼の心情的な側面を過度に強調するところが多くなっている。しかし、若者たちの社会意識に注目して戦後史を解読するというのは、ひとつの重要な視点である。われわれ年長世代が、より当事者性のある、また資料的にも完備したものを書くべきなのだろう。その意味では、けっこう刺激的な本だった。文章は平易で、きわめて読みやすい。

新左翼とロスジェネ (集英社新書)

新左翼とロスジェネ (集英社新書)