田中哲男編著『焦土からの出発』

 これも『TOKYO異形』と同じく、東京新聞の好企画。単に、戦争直後の記録写真を集めたというものではなく、ドラマがある。新聞社所蔵のもののほか、米空軍の元写真偵察部員が庶民を撮影し、のちに中部大学に託した写真、市民が所蔵していた写真などが多数収められ、等身大の歴史が立ち現れる。少年少女時代に被写体になった人々の何人かが名乗り出て、当時を証言しているところでは、感動的なエピソードも多い。
 新橋駅前に初めてバラックが建ち始めた頃の写真や、現在の新宿思い出横丁の北端の線路下通路あたりの写真など、ヤミ市時代についてはかなりの写真を見てきた私にとっても、新しい発見が多い。あの時代の雰囲気を、つねに手元で感じることができる、優れた写真集である。

東京の記憶 焦土からの出発

東京の記憶 焦土からの出発