洋泉社ムック編集部『アキバ通り魔事件をどう読むか!?』

 8月28日発行だから、事件から3ヶ月経たないうちに刊行されたことになる。まあまあのスピードといっていいだろう。短いもので3ページ、長いものでも10ページほどの小文を25編ほど収めていて、執筆者は、赤木智弘雨宮処凛吉田司小浜逸郎三浦展東浩紀宮台真司内田樹など、なるほどという感じ。
 何人かの論者が共通に指摘していたのは、これが一種の「自爆テロ」だということである。
 雨宮処凛は、合法的な運動よりも残酷な凶行の方が社会を動かすという「恐ろしい現実」について語っている。そして仮に彼が経団連を狙って凶行に及んだとしたら「テロには屈しない」などといわれて、派遣制度の見直しには向かわなかっただろうという。吉田司は「ド素人によるテロ」の始まりだと、また小浜逸郎は複雑化して輪郭のない社会に対する、政治目的のないテロだったとする。本田透は、自分が「工場で単純労働していたときは、頭の中がかなりテロリスト的な状態になってました」と語り、柳下毅一郎は米国では郵便局員が最下層とみられていて、いじめにあって銃を乱射するという事件が何件かあったことから、狂乱して銃を乱射することを「Go Postal」というのだと応じる。宮台真司も、本人の意図はともかく「政治テロ」として成功したという。
 どう考えても、客観的に政治的効果を持ったテロだったのは確かだろう。しかも、雨宮処凛が言うように、どんな左翼より労組より強力な効果を持ったテロだった。テロを肯定することなく、まだまだ潜在しているであろうその破壊力を、まっとうな道へと導くにはどうすればいいのか。これが、最大の問題である。おそらくは、回答が見つからぬうちに第二第三の凶行が起こるのだろう。

アキバ通り魔事件をどう読むか!? (洋泉社MOOK)

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