鎌田慧『いま、逆攻のとき』

 派遣労働、外国人労働、貧困などに関して、この著者が最近書いた文章を再構成してまとめられた前半部と、川田文子、湯浅誠との対談を収めた後半部からなる。この人の文章は、ふだんから『週刊金曜日』で読んでいるので、内容的には見慣れたものが多いが、いろいろ教えられることもある。
 中国のジーンズ工場の女工たちを描いた『女工哀歌』という映画があるとのこと。ぜひみてみたいものだ。「国労が強かったのは、職場単位で分会があり、一緒に働き、一日の仕事が終わったあとには一緒に酒を飲む、ということをずっとやってきたからだ」という一文がある。そのあたりの日常を描いたようなエッセイ、小説の類はないのだろうか。川田文子によると、間引きを歌った子守歌が、全国各地に残っているとのこと。旧著に書いてあるのだろうか。探してみよう。
 やはりいちばん読む価値のあるのは、湯浅誠との対談だろう。鎌田は、労働力の再生産が成り立たない賃金しか支払わないというのは、将来の社会のことを考えていないということであり、公害問題と同じだ、という。まったくその通りだ。湯浅は、欧米では市民が労働者と消費者としての両側面を使った運動を展開し、たとえば児童労働や搾取労働に抗議する不買運動が行なわれてきたが、日本にはそのような例がない、という。なるほど。フェア・トレード運動に対して、「フェア・プロダクション運動」とでもいうべきものが、考えられるべきなのだろう。
 しかし、一五九頁で一五〇〇円は高すぎる。このページ数なら、販売部数を考えても一三〇〇円までだろう。大月書店も金儲けに走ったか、という印象を受ける。

いま、逆攻のとき―使い捨て社会を越える

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