幸徳秋水『社会主義神髄』
何をいまどき、という感もあるが、はじめて読了。
初版刊行が1903年ということもあり、理論的な水準からいえば、きわめて初歩的で、また天皇制と社会主義の両立を力説するなど、時代を感じさせる部分も多い。しかし、たいへん面白かった。個人の持つ技能について「実に社会全体の感化、教育、薫陶、啓発の賜物に非ざるはなし。既に社会に負う所多き者、亦多く力を社会の為に効すは当然の責務のみ、何ぞ物質的財富の多きを貪る可きの理あらんや」としたところなど、まるでロールズ的な「能力の社会的資産説」である。また「高尚なる品性と偉大の事業とは、決して社会貧富の両極端に在ずして、常に中間の一階級より生ずる者也」と、中間階級革命論を説いているところも注目。なかなか現代的な意義のある書といえる。
- 作者: 幸徳秋水
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1953/02/05
- メディア: 文庫
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