太郎丸博『若年非正規雇用の社会学』

 タイトルだけみると、最近注目のテーマを扱ったタイムリーな企画、とみえる。実際、そういう側面もあるのだが、ちょっと違う。実はこの本、社会階層論の教科書でもある。中心テーマとして若年非正規雇用を取り上げながら、社会階層の概念や理論、社会階層分類の方法についてもきちんと説明するという、たいへん教育的な書物なのである。
 私の著書のいくつかも含めて、格差に関する本の多くは格差の問題を幅広く、またアクチュアルに取り上げてはいても、こうした基礎的な知識を体系的に提示していないことが多い。その意味で、本書の価値は大きい。私より10歳ほど若い世代の著者だけに、海外の最新の研究などもいろいろ紹介されている。中堅バリバリの研究者らしい本で、学生はもちろんのこと、格差の問題に関心があるがジャーナリスティックな本は読み飽きたという社会人にもおすすめできる。

若年非正規雇用の社会学‐階層・ジェンダー・グローバル化 (大阪大学新世紀レクチャー)

若年非正規雇用の社会学‐階層・ジェンダー・グローバル化 (大阪大学新世紀レクチャー)