不破哲三『マルクスは生きている』

 少し話題になっている本である。読んでみると、「共産党も少し変わったな」と思わせる部分と、「やっぱり共産党は変わらないな」という部分がある。
 変わったなと思うのは、まず恐慌に関する過少消費説と過剰生産説を組み合わせようとしているところ。しかも地球温暖化の危機を強調しているところをみると、やや過剰生産説に近づいているようにみえる。
 変わらないのは、マルクスに対する個人崇拝的な姿勢や、弁証法を自然科学まで含めて科学全般に通用する方法論とみなすところ。それに、相変わらず被雇用者の大部分を労働者階級としているところなど。著者によると、「労働力統計」(こんな名前の統計はないが)を調べてみると、日本の労働力の4分の3が労働者階級だという。
 未来社会について著者は、生産手段の社会化が実現されたら階級の区分はなくなるという。これは一部の管理職を除く被雇用者全員を均一な労働者階級とみなす以上、論理的な帰結だが、ここで見失われているのは、現在でも生産手段の非所有者である被雇用者内部に、きわめて大きな格差があることだ。この格差は、被雇用者内部に搾取関係があると考える以外に説明のしようがない。このへんの認識が変わらない限り、共産党は基本的には変わらないままというほかないだろう。

マルクスは生きている (平凡社新書 461)

マルクスは生きている (平凡社新書 461)