古川緑波「ロッパの悲食記」

 古川ロッパ(緑波)は、戦前から戦後にかけて、エノケン(榎本健一)と並び称せられた喜劇役者。しかし、エノケンが生粋の役者だったのに対して、ロッパは華族出身のインテリで、演劇・映画評論なども手がけ、著書もいくつかある。膨大な日記を残しており、これは昭和史の貴重な資料ともなっている。
 本書は食にまつわるエッセイを集めたもの。戦中の食糧難の時代に、あの手この手で美味いものにありついてはむさぼり食っているようすが描かれている。とくに、まだまだ食料も酒もふんだんにあった地方へのロケの際には、いい思いをしたようだ。現在の牛丼の先祖にあたる料理、カメチャブについての記述があるのにも注目。あくまでも、軽いエッセイ集である。

ロッパの悲食記 (ちくま文庫)

ロッパの悲食記 (ちくま文庫)