いのうえせつこ『地震は貧困に襲いかかる』

 いまから考えると、バブル景気とその余波に、最終的な終止符を打ったのは、阪神淡路大震災だったのではないかという気もする。被害の大きさだけではない。日本に深刻な貧困と格差があることを、世に知らしめたからである。
 被害の大きかったのは、低地にある狭小な木造住宅密集地だった。生活保護受給者の死亡率は、平均の5倍だった。家を失って仮設住宅に入居した人の7割は、年収が300万円未満だった。被害には、明らかな階級性があった。
 本書は、こうした事実を丹念に拾い集め、格差社会と震災の関係を明らかにしていく。そして、「今回の大震災による『建物被害と人的被害』が露呈したものは、日本の社会の階級性そのものではなかったろうか。つまり、誤解を恐れずに言うなら、日本の資本主義の矛盾を一手に引き受けた高齢者をはじめとする『震災弱者』だった」という。
 現状では、今後起こるであろう災害も同じような、あるいはそれ以上の階級性を帯びることは避けられないだろう。格差は最終的には「生命の格差」に行き着くが、その一側面を鮮明に描きだしている。

地震は貧困に襲いかかる―「阪神・淡路大震災」死者6437人の叫び

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