東海林智『貧困の現場』

 著者は毎日新聞社会部の記者だが、これは連載記事などをまとめたものではなく、書き下ろし。ちなみに著者の名前は「しょうじ」ではなく「とうかいりん」だとのこと。
 この著者、なかなか熱血漢で、情にもろい。だから、生活保護申請の窓口で、役所の係員が申請をやめさせようとしたり、高圧的な態度をとったときには激しく怒り、係員を問い詰める。困窮している人から話を聞きながら、いっしょに涙を流す。集会での訴えを聞いてまた泣き出してしまい、とったメモは涙で判読できない。
 こんな記者だから、メッセージは熱い。ときにはマスコミ、そればかりか同じ新聞社の同僚への怒りも、噴出する。巻末には、首都圏青年ユニオンのリーダー、ホームレスの調査をしているフランス人大学院生との対談があり、反貧困運動の今後について、熱く語り合う。大新聞社の社員らしからぬ、どぶ板的参加型ジャーナリズムの成果である。

貧困の現場

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