鈴木邦男・川本三郎『本と映画と「70年」を語ろう』
これは、異色の対談。鈴木邦男は新右翼のイデオローグだが、「赤衛軍事件」で逮捕された川本に、ずっとシンパシーを感じ続けていたという。右翼とはいっても、偏狭なナショナリズムでも体制派でもなく、思想的にはともかく政治的にはむしろ左翼に接近する場合もある鈴木のことだから、分からないでもない。しかも本人も、新聞社をクビになった経験がある。
そんな二人が、70年の体験と三島由起夫事件、当時の映画、そして天皇制やテロリズムについてホンネで語り合う。誰かのお膳立てや、雑誌のページ稼ぎではなく、本人の切なる希望で実現した対談だけに、おもしろい。鈴木の一方的な片思いのようなものだから、最初は川本も驚いたらしいが、だんだん意気投合していく。全共闘に対するシンパシーはもちろんだが、いちばん好きな映画監督は成瀬巳喜男だと、意外なところで一致したりする。
川本によると、「マイ・バック・ページ」の映画化が決まったとのこと。自身も、全共闘に関わった人々がその後どう生きてきたかを、自分一人で取材してノンフィクションにまるとめつもりだという。これは、完成が待ち遠しい。新書の対談にはろくな本がないと思っていたが、これは必読。
- 作者: 川本三郎,鈴木邦男
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/05/13
- メディア: 新書
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