池波正太郎『おおげさがきらい』
著作集にも収録されなかった池波正太郎のエッセイを集めた5冊シリーズの1冊目で、1956年から67年までの文章を集めている。特にこの時期の著者に関心があるというわけではないのだが、表紙の写真の、著者に抱かれておとなしくしている猫の写真があまりにもチャーミングだったので、買ってしまった。
忘れられていた小文ばかりだけに、どうでもいいような文章も多いのだが、なぜこれが忘れられていたのかというような重要な作品もある。たとえば、1960年に書かれた「『ろくでなし』の詩と真実」は、小学校を卒業した頃から都の職員を辞して作家専業になった頃までの思い出を記したもの。この著者には自伝的エッセイが多いが、これほど長い期間の出来事をまとめて書いたものは少ないのではないだろうか。関心のある人は、この一本のためだけでも手元に置く価値がある。
- 作者: 池波正太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/02/10
- メディア: 文庫
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