都市論・東京論

月刊アクロス編集室『「東京」の侵略』

今から20年ほど前、「第4山の手」という言葉が使われていたのをご記憶だろうか。小石川・本郷が第1山の手、牛込・四谷・麹町が第2山の手、杉並・世田谷・目黒が第3山の手、そしてその先の横浜市緑区・青葉区から町田市・多摩市・八王子市・立川市を経て所沢…

加太こうじ『東京の原像』

加太こうじは、もともとは紙芝居作家だが、後に東京の庶民文化研究者となった人。この本は、明治から昭和初期の庶民文化の概説といったものだが、とくに「山の手と下町」の違いと対立関係について詳しい。 両者の気質の違いは、武士と町人の違いだとし、これ…

川本三郎『私の東京町歩き』

必要があって、再読。最近「居酒屋考現学」などというものをやっているが、これはその着想を得るきっかけの一つになった本である。 著者は東向島から鐘ヶ淵あたりを散策し、縄暖簾のやきとり屋に入ってビールを注文する。すると、隣の客が話しかけてくる。「…

山田太一編『浅草』

さまざまな文士や学者などが書いた浅草に関する小文を集めたリーディングス。編者が山田太一というのは意外な気がしたが、実は浅草生まれとのこと。 冒頭におかれた鳥居龍蔵の「人文地理上より見たる江戸と浅草」は、東京の地理的な特徴と浅草の位置を解説し…

川本三郎『ちょっとそこまで』

原著は1985年。『都市の感受性』『雑踏の社会学』などに続く、著者の都市論・紀行文としては初期に属するもの。 中野、阿佐ヶ谷、高円寺、小岩、亀有など、かつての郊外都市の良さを「どこにでもある匿名性」と喝破し、大きな盛り場に「群衆の中の孤独」があ…

岩渕潤子・ハイライフ研究所山の手文化研究会編『東京山の手大研究』

必要があって、再読。 いちばんの読みどころは、戦前期の東京帝大教授の地理的分布を図で示して、その変遷を明らかにした部分。帝大教授たちは、明治中期には主に本郷・小石川・牛込・四谷など都心の山の手に住んでいるが、日本橋や神田など下町の住人も3分…

サイデンステッカー『東京 下町山の手』

日本文化研究家のサイデンステッカーは、大の下町びいきだった。 浅草について書いた一文には、「日本のいわゆる知識階級の生活が、正気の沙汰ではなく、馬鹿馬鹿しくて仕方がなくなってきた時、時評のために、山と積まれた文芸雑誌のどれもこれもが、つまら…